2025年版ものづくり白書、経済安全保障を考慮した成長投資に言及

経済産業省によると、2025年版ものづくり白書は、事業環境の不確実性が高まる中、製造事業者は脱炭素、経済安全保障の観点を考慮した中長期的な成長投資を行うことが重要になると指摘しています。また、製造業におけるDXの推進は、製造事業者の稼ぐ力の向上やGXの推進等に資する重要な取り組みだと位置付けています。
経済産業省によると、2025年版ものづくり白書は、事業環境の不確実性が高まる中、製造事業者は脱炭素、経済安全保障の観点を考慮した中長期的な成長投資を行うことが重要になると指摘しています。また、製造業におけるDXの推進は、製造事業者の稼ぐ力の向上やGXの推進等に資する重要な取り組みだと位置付けています。
経産省が公表している2025年版ものづくり白書によると、事業に影響を及ぼす社会情勢の変化に関する調査の結果について、2023年度と2024年度を比較すると、2024年度も引き続き「原材料価格(資源価格)の高騰」、「エネルギー価格の高騰」に加え「労働力不足」を挙げる事業者が多かったといいます。
2024年度に割合が上昇した項目は、「賃上げ要請」、「物流コストの上昇・キャパシティの不足」、「労働力不足」などがありました。また、2024年度の調査では、「為替変動」に加え「金利変動」を選択項目に追加したところ、これらを挙げる事業者も約2割に上りました。
ものづくり産業におけるDXは、生産性向上や競争力強化のために不可欠ですが、中小企業においてはその取り組み状況に特徴が見られます。
デジタル技術を活用した業務改善は、「製造」、「生産管理」、「事務処理」、「受注・発注・在庫の管理」といった比較的現場に近い、あるいは定型的な工程で実施率が高い傾向があります。
一方、「企画・開発・設計」や「品質管理」といった創造性や専門性の高い工程での実施率はやや低めです。従業員数が多い企業ほど、様々な工程でデジタル技術の活用が進んでいます。
DX推進における主導者を見ると、従業員数が少ない企業では「経営者・役員」が先導するケースが多くなっています。一方、従業員数301人以上の企業では、「デジタル技術に精通した社員」が先導する割合が高くなっており、導入のきっかけも「グループ企業・取引先からの要請」、「ベンダー等からの推奨」など様々だといいます。
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導入を検討するときは、「費用対効果の検討」を多くの企業が行っており、「業務の棚卸し」や「予算の確保」、「現場課題のデータによる可視化・分析」については、全体で実施率は3~4割程度でした。
DX人材の確保については、約6割の企業が「社内人材の活用・育成」で対応しており、「新規採用」や「外部委託」もそれぞれ約2割程度利用しています。
社内人材の育成はOJTが最も多いものの、社外研修や社内研修も多く実施しています。デジタル技術の活用を社内に定着させるためには、「ビジョン・目標の社内での共有」が最も実施されている取り組みです。
白書は、中小企業のDX事例として、「設備の見える化」と人財育成で企業と労働者の成長を推進している山本工作所(福岡県)や、省人化や生産効率の見える化のために自社開発システムを導入した長島製作所(岩手県)、ベテランの技術やノウハウをデータベース化し、若手育成や技能伝承に活用するシステム「トラの巻」を自社開発した旭ウエルテック(石川県)を紹介しています。
これらの事例は、外部に頼るだけでなく、自社の課題に合わせて独自にDXに取り組むことが可能であることを示しています。
国際通貨基金(IMF)の分析によると、世界的な産業政策の目的は、自国産業・企業の競争力の確保、気候変動対応、経済活動に係る安全保障の確保(経済安全保障)の関連で3等分されているといいます。
このうち、経済安全保障は、サプライチェーンの安定化や機微技術の流出防止といった観点から、ものづくり企業にとって無視できないテーマとなっています。製造事業者が経営の中で意識した国際情勢として、過去の先端技術流出問題や近年の米中摩擦に伴う輸出規制強化などが挙げられています。
「経済安全保障」という言葉の認知度は一定程度あるものの、「具体的なイメージがわかない」と回答した事業者が最も多く、その取り組み内容はまだ十分に浸透していません。経営層が経済安全保障を議論する頻度も低い傾向が見られます。
経済安全保障の取り組みを実施している企業では、「情報管理体制やサイバーセキュリティの強化」と「部素材調達先の変更や多元化」が主要な内容となっています。これらは比較的最近になって本格化しています。
経済安全保障の取り組み体制については、専門部署を設置している企業は少なく、「特に体制は設けず、必要に応じて対応」している企業が過半数を占めます。
取り組みを進める上での課題としては、「国際情勢に関する情報収集」が最も多く挙げられています。リスク分析はサプライチェーンの観点で行われることが多いものの、自社の技術の観点からの分析はまだ少ない状況です。また、サプライチェーンのリスク分析で把握している範囲は、直接または2~3社先までが多く、より広範な可視化が課題となっています。
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